| 「若者へのエンパワメントと コミュニティや農業との関係づくり」 ボタンのかけ違いを修正し、つないでいくことによる相互支援 「まちづくりコーディネーター」冥利に尽きること 市嶋 彰 2008.01.10学校だより第5号より |
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『僕たちには未来がない、やりたいことが見つからない、生きていく張合いがない』今、20〜30代(10代も含めて)の若者の中で、こんな希望のない思いで日々を過ごしている人たちが増えてきている、と言われている。いや、確実に増えてきている。 私は7年前から「不登校」や「ひきこもり」の支援団体NPO法人「メンタルフレンドにいがた」の副理事長を務め、こういった『生きづらさ』を抱えた子どもや若者たちに実際に関わってきた立場として、実感しているからだ。 こういった若者たちは、一般的には「ニート」ということばと概念でひとくくりにされているが、その状況は多様である。その多様さゆえに、対応も一様ではうまくいくはずもない。そこで、平成18年度より厚生労働省の事業として「地域若者サポートステーション」(以下サポステ)という施設が全国展開で開設されるようになる。新潟ではいち早く18年度より三条市に、そして今年は新潟市にOPENした。両施設とも中間支援組織が事業委託をし、「メンタルフレンドにいがた」が事業協力をしている。 そこで顕在化してきたことは、予想を超える反響と内容であった。両施設とも予定を上回る相談件数を数え、さらに想定していた範囲をはるかに超える、若者たちの『生きづらさ』の多様性と、それを受けとめる保護者の苦悩だった。 事業の主目的は、「自立支援」ということであるが、『自立』という意味も多様性を持っていて、単に親元を離れたり就職したりすればそれで問題が解決するわけではない。最初に掲げた、『希望』や『生きがい』のような、その人らしい生き方を本人が自主的に見つけていくことを『エンパワメント』することが、最大かつ本質的な自立支援と考えている。 しかし、こういった若者たちが働く意欲を持っていても、実際の環境はとても厳しいのが現実である。背景には、本人の多様な内的理由とは別に、外的・社会的環境に共通性が見える。結論からいえば、受け入れ企業の幅の狭さと言えるだろう。日本の企業はいまだに、正規雇用採用は学卒直後というのが就職スタートラインの条件となっていて、しかもその後かなりの期間在籍するというのが、その後の転職などの評価に関わってくる。卒業後、就職までの時間を経過している人、ましてや五月雨的な仕事の就き方をする人(フリーターも含めて)などを、能力があっても積極的に正規雇用しようとする企業は極めて少ない。さらに厳しい経営環境を背景に、間接賃金にコストがかかる正規雇用を出来るだけ減らそうという傾向もそれに拍車をかけている。 そんな状況の中で、『生きづらさ』を抱えた若者達が、安定していてさらに本人が希望し、しかも本人にふさわしい『しごと』に就くことは奇跡に近い。企業側の事情もそう簡単に打破できるとも思えない。 ところが一方、中小企業それも特に製造業あるいは老舗の小売店さらに専業農家などの中には、ノドから手が出るほどに後継者としての若者を欲しがっている事実がある。これは、完全にボタンのかけ違いということが言えよう。 そこで、私どもでは新潟サポステの新発田サテライトとタイアップしながら、商店街の店主と若者との交流をスタートさせ、お互いのコミュニケーションを図る中から、今まで仕事としての範囲の想定に入っていなかった分野での自分の活かし方を模索する、という事業を始めようとしている。感触がよければ、新潟市の上古町商店街でも同様の事業に取り組みたいと考えている。商店街の再生を若者の力に委ねるという新しい試みである。 さらに、自立を促進するための仕掛けとして、若者の居場所と喫茶店経営をドッキングさせたジョブトレーニング事業も新潟市の本町通りで展開する予定である。そして、ここでの将来的付帯事業として、高齢者世帯への『御用聞きや食事のケータリングサービス』あるいは商店街との相互乗り入れによる『託児サービス』などのコミュニティビジネスを、これも上古町商店街などと連携していくことを大きなビジョンとして考えている。今までは個人的な夢のような計画であったが、意欲ある若者達と巡り合うことによって、こんな可能性さえも生まれてきている。 さらに、今年度から、私が長年関わっている十日町市松之山の『棚田保全』の活動にも若者に参画してもらい、農業や農家の人との接点を設けることを始めた。中山間地の農家の後継者不足は想像を絶するものがあり、特に作業の厳しい棚田などでは耕作放棄を支えながら今後の農家経営自体を担っていく可能性が、この若者達の中に秘められている。 両者でニーズがありながら、それぞれにはこれが伝わらず、物事が行き詰まっている例は世の中に星の数ほどあるはずだ。そのボタンのかけ違いを修正し、つないでいくことは『まちづくりコーディネーター』冥利につきるのではないだろうか。 |
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